LEDと鉄道貨物

LEDと鉄道貨物ー省エネの決定打ー

世に省エネを謳う製品は巷に溢れています。また省エネを語っているつもりの人もたくさんいます。だけど省エネの決定打は何?と聞かれて応えることが出来る人は、おそらくほとんどいないでしょう。

これを読んだら覚えておいて下さい。省エネの決定打いわばホームランは鉄道貨物、それに続いて三塁打級であるのがLEDだということを。

何故そうなのかをご説明しましょう。

答えを書く前に、省エネの決定打とは何を意味するかを、はっきりさせておきましょう。

産業革命以来発達し、特定の目的で便利になって現代社会を潤しているが、同じ目的での古い形のものより、エネルギー消費の大きさが格段に小さくなるものを探すのです。抽象的でわかりにくいかも知れません。具体的に見ていきましょう。

産業革命で物資が多量にかつスピーディーに、移動することが出来るようになりました。北海道や九州の産物を、東京や関西圏で産物を生み出す地域とほぼ同じレベルで、楽しめるようになりました。これは化石燃料を大量に使う、物流革命に拠っています。

昔は「蛍の光窓の雪」のわずかな明かりで夜勉強したのですが、電灯の発明で、そのような話は遠い遠い過去の話になりました。遠い過去と言っても、明治維新があった150年ほど前の話でしかないのですが。世界的に見ても電気の実用化は19世紀終わりになってからになります。

物資の輸送、夜の光、どちらも今は当たり前の話になっていますが、150年前には想像もつかなかったのです。そのような産業革命以来の技術的な恩恵にたいして、極度に省エネを達成し技術を将来にわたって持続的なものとし完成させたものとして、今物流と照明に、歴史に残る物があります。

まずその効果が良く知られ、省エネと言ったらこれというものが、照明器具にあります。そうLEDですね。電気による照明はエディソンによって発明され、最初は長い間白熱球でした。今LEDを買えば60型、100型などありますが、60型は、昔普通に使われていた、60Wの電力を消費する白熱球と同じ明るさを持つと言うことです。製品を手にとって消費電力を調べてみましょう。付帯条件により若干の差が出てきますが、例えば8W程度でしょう。消費電力は8/60つまり2/15になりました。1/10程度だが、それより若干多い。

もっと効果が大きいものがあります。それが物流の担い手貨物輸送のなかにあります。

鉄道貨物は貨物を鉄道で移動します。これに対して古い手段は、トラック輸送です。古いと言っても、たかだか百年前に始まったものなのですが。トラック輸送も鉄道輸送も。どちらも荷物を移動させるという意味で、同じ目的に使われます。そしてすぐ後に見るように、鉄道貨物はトラック貨物の1/10以下のエネルギーですむのです。こんな省エネ効果は他に類を見ません。多くのHPに10%削減という文字は躍りますが、1/10と言えば90%削減です。1/10以下ですから、90%以上削減です。え、嘘だろうって? すぐ後に納得してもらう記事を書きますよ。


鉄道貨物とトラック貨物のエネルギー消費量の比較

貨物輸送は莫大なエネルギーを消費している現代社会の要因の一つです。その量と消費エネルギーを見てみましょう。

まず貨物輸送量を見てみましょう。単位はトンキロで表されます。例えば東京ー京都間を貨物輸送するとしましょう。10トンの荷物を輸送すれば、京都ー東京間の距離は500キロくらいですから、貨物輸送量は五千トンキロということになります。距離が二倍になったら輸送量は二倍、重量が二倍になっても輸送量は二倍。貨物輸送量は距離と重量の積に比例します。これがトラック一台の輸送量だとすれば、一年の総輸送量は、これらの輸送量をすべて足し合わせたものになります。

総務省が毎年発表する「日本の統計」の中に、貨物輸送量が示されています。一番新しく発表された2016年度のデータでは、トラックの貨物輸送量は210,316千トンキロ、鉄道による貨物輸送量は21,260千トンキロでした。トラック輸送が鉄道輸送のほぼ10倍であったことが解ります。

一方資源エネルギー庁が毎年発表する「総合エネルギー統計」を読み解けば、貨物輸送での消費エネルギーが解ります。少々慣れなければ難しいですが、トラック貨物輸送のエネルギー消費は1,145,962.8TJ、鉄道貨物輸送に使われたエネルギーは、7,515.9TJでした。何とエネルギー消費で比べると150倍の差があります。トラック輸送は鉄道輸送に対して、10倍の貨物輸送量ですが150倍のエネルギー消費をしているのですから、同じ輸送量なら15倍異なっていることになります。どうです。LEDよりすごい違いでしょう。何故人々はこれに注目しないのか? 不思議な気がしますが、エネルギー問題をトータルにとらえる人あるいは組織が、日本に不幸なことに存在しなかったということでしょう。

基本に戻って考えよう

それにしてもトラック貨物と鉄道貨物はなぜこんなにエネルギー消費が違うのでしょう。基本に戻って考えましょう。千年文化を考える会は、常に基本に戻って考えようと主張しています。基本はじっくり考えれば誰にでもわかるものですから。

トラック貨物と鉄道貨物は、二つ決定的な違いがあります。一つはタイヤで走るのかレールの上を鉄輪で走るのかという違いです。今一つの違いは、内燃機関で石油を燃して走るのか、電動モーターを使用するのかの違いです。どちらもエネルギー消費が1/5程度と、エネルギー消費が劇的に削減されると考えて良いでしょう。つまりそれぞれでエネルギー消費の80%削減です。あくまでアバウトにですが。一つだけでもLEDに肉薄しています。LEDのエネルギー消費削減は、白熱球に比べて80%以上ですが90%にはなっていませんでしたからね。

さてこの違いの理由をそれぞれ考えてみましょう。まずタイヤと鉄輪です。どちらも車輪ではありますが、接地の違いが出てきます。

車輪の発明は古代にさかのぼります。例えば日本でも平安時代牛車が使われていたわけです。車輪は運動に対する抵抗を大幅に減じます。車輪をつけなければ、トラックも鉄道貨車も絶対に動かないでしょう。

では車輪があればいいのかというと、そうではありません。自転車のタイヤで、空気が大きく抜けてしまうと、自転車が重く感じられませんか?空気が抜けるとタイヤの変形が大きくなり、それが運動に対する抵抗に変わるのです。変形はそれを通してエネルギーを消耗するのです。

レールの上を鉄車輪で走れば、変形は極力小さくなります。それに伴って運動に対する抵抗が極度に抑えられます。ひいてはエネルギーの消耗が少なくなります。これが理由となって、同じ重量の車両が、同じ距離を走行するとき、鉄道ではタイヤ走行の車両より、およそ1/5にまでエネルギー消費が減少するのです。あくまでもアバウトにですが。

もう一つの違いはディーゼルエンジンなどの内燃機関と、電動モーターの違いです。

これについての考察を、実際の体験から始めてみましょう。電気自動車の普及はまだまだの感がありますが、それでもほとんどの人は電気自動車に乗ったことはあるでしょう。そのとき最初に何と思いましたか?

今から10年位前、電気自動車が一般市場に出始めたころ、電気自動車は頻繁にニュース番組で取り上げられました。そしてすべてのキャスターが異口同音に言ったことがあります。音が静かで振動も少ないと。

逆に言えば、これまでのエンジンは、音がうるさく、振動が激しいということになります。音も振動もエネルギーを伴います。エネルギーを無駄に使っているのです。

そのため石油を燃して発生するエネルギーのうち、20%以下のエネルギーしか、軸の回転運動に使われません。これをエネルギー効率20%以下と言います。それに対して電動モーターは100%近くの電気エネルギーが、回転運動のエネルギーに変わりますから、結局これまでのエンジンは電動モーターの5倍程度のエネルギーを無駄に使っていたということになります。

こうして電気で作動する鉄道貨物の消費エネルギーは、アバウトに言ってトラック輸送の1/25程度のエネルギーで済むことになるのです。え、データによれば1/15じゃないかって? いい質問ですね。気が付きましたか? 鉄道貨物の消費エネルギーには軽油が含まれています。電化されてない鉄道ではディーゼル機関車が貨物を引っ張ります。そうすればレールによる1/5の省エネ効果しかないわけで、これが足を引っ張っているのです。

それではCO2が1/11ということはどういうことかって? それは次に書くことにしましょう。

CO2排出

上に述べたことはCO2排出量と整合性があります。

CO2排出量は非常に専門的な値です。一般の人には理解できない量だと思っています。私自身エネルギーから考えて、その後CO2排出量を考えます。CO2排出量を計算する人は、ご自分では解らない表を基にして、その表から計算されている方が大半だと思っています。実際私が大学教員時代、私の講演の後、コメントを経済学部のある有力教員の学生さんが述べられて、これこれこういうことでCO2が何トン削減されますと言っていました。この方も今では中堅エコ関係者として、相変わらずご自分では解らない表を基に、自治体への報告書などに、CO2何トン削減など、一生懸命おやりなのでしょう。

CO2が何故排出されるか? それは単純に化石燃料をエネルギー源として使うからです。ガソリン、軽油など、原油から精製される石油製品と呼ばれる燃料を燃せばCO2が出ます。石炭や天然ガスを燃してもCO2は排出されます。

貨物輸送量と消費エネルギーについて、このページで考えました。トラック輸送の貨物量は鉄道輸送の約10倍、それに要するエネルギー量は150倍。同じ貨物輸送量なら15倍のエネルギー量が必要であると。この論理は大まかに言って、誰にでも解るものではないでしょうか。小学生の知識と算数能力でも理解可能です。エネルギーで言えば1/15。

国交省が発表しているCO2排出量は1/11となっています。このギャップはどこから来るのでしょうか? 専門家ではないですから、あくまでアバウトに考えてみましょう。

鉄道貨物の消費エネルギーのうち、およそ半分が電気、残りは軽油です。貨物輸送には、全国ほとんどの地域で電気機関車が使われます。その消費エネルギーは電気です。でも電化されていない地域もかなりあります。そこではディーゼル機関車が使われ、そのエネルギー源はトラックと同じ軽油となります。

1/15のエネルギー消費のうち、半分は電気、半分は軽油ですから、電気と軽油はそれぞれ1/30ずつとなります。

トラックであろうと鉄道であろうと、軽油のCO2排出量は変わりません。したがってディーゼル機関車からのCO2排出量はトラックからの排出量の1/30となります。ディーゼル機関車の貨物輸送量は、圧倒的に少ないですが、それでも1/30もエネルギーを消費するとみることも出来ます。

圧倒的に多い、電気機関車による貨物の必要なエネルギー1/30は電気からです。電気は発電されなければいけません。現在は火力発電がメインです。日本の火力発電の効率は、平均40%です。もしすべてが火力で発電されたら、消費する化石燃料のエネルギー量は、2.5倍になるわけです。そして同じ燃料が使われたら、CO2排出量も2.5倍に。

そのような想定を基にCO2排出量を考えて見ましょう。簡単のために、火力発電のエネルギー源が軽油としましょう。1/30の電気を発生させるために、その2.5倍の軽油が必要です。つまりCO2排出量は2.5/30=5/60となります。これをディーゼル機関車からの1/30をたせば、都合5/60+1/30=7/60。1/10より少し多いですが、電気は火力発電からだけではなく、水力をはじめとする自然エネルギーおよび原発からも得られていること、どちらもCO2を排出しないことから、1/11という値は、納得がいく値であることが解ります。詳しい計算は、それこそ専門家がおやりになれば良いことでしょう。ただその専門家は、エネルギーについて全く無知であるが、CO2排出の表を見る専門家とは、すこし違うのじゃないかと考えています。