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感染拡大のモデル

実効再生産数:感染拡大縮小はどのようにして決まるのか(5/31)

実効再生産数という言葉が、ニュースで取り上げられたことを、覚えておられる方は少ないのではないでしょうか? でもそれは感染が拡大するかそれとも減少するか、明暗を分ける大切な概念なのです。このページはそれを考えて行きます。

一人の感染者が何人に感染を広げるのか

実効再生産数とは、一人の感染者が何人の人に感染を広げるのかという数値です。統計上の概念ですが、それをモデルとして簡単に示す数です。

一人の感染者が二人の感染者に感染を広げるとしましょう。そうすれば、一人が二人に、次は四人にさらには8人にというように増えていきます。要は二倍二倍と増えていくことで、これを指数関数的に増大すると言います。

これは経済学の初歩でも習う関数で、複利計算で年利8%では9年後には約二倍になりますから、18年後に約4倍、27年後には約8倍に増えていきます。すべての経済学者がこれをほとんど初期に習うことが、中途半端な経済学の拾得者を含めて、永続的な成長を信じる基になっていると私は考えているのですが、・・これは余談です。

自然界ではこの指数関数的増加は良く見られる現象ですが、しかしそれは初期の間だけで、「成長」は、何らかの働きでストップします。そうでなければ地球の生命体はすべて絶え果てていたでしょう。経済学者が皆そのことも習っていれば、今みたいな成長神話を皆が信じることはなかったでしょうが。コロナウィルスにも当然成長の限界が起きて、感染はストップします。

成長の限界の仕組み

成長の限界はどのように起きるのでしょうか? さまざまな形で起こりうるのですが、一番簡単な仕組みを考えて見ましょう。貴方が感染者で菌を持っている間に10人の人に会うとして、そのうち二人を新しい感染者にすると考えて見ましょう。感染拡大の初期には、その10人にはまだ感染の経験がないですから、二人感染者が出てきます。そしてその二人は別の十人に会い、二人感染者を出します。こうして倍々計算で指数関数的に感染は拡大します。

しばらく立ってその社会の50%の人がすでに感染を経験しているとしましょう。そうすれば貴方が感染している間会う10人の内5人が既感染者となります。したがって二人にうつすとして、その内一人は免疫を持っていますから感染せず、新たな感染者は一人になります。

つまりこの時期には一人が一人にうつす、定常的な状態になって、感染拡大が指数関数的に増える「成長」は止まります。更に感染が拡大して60%の人が既感染者となった状態では、10人の内二人は、二人とも既感染者である可能性が高くなっていますから、感染者数の増大は次第にストップしていきます。このように簡単な仕組みで考えて、60-70%の人が感染すれば、感染はそれで広まることはなくなる、つまり免疫を持った人が、感染拡大を抑えるのだ、ということが初等的な理論で解ります。これを集団感染を持つと言います。全人類が集団感染を持てば、感染はそこでストップするという理屈です。

CDC(アメリカ保険局)やメルケル首相が6-70%の人が感染するだろうというのは、この単純な理論から出てきた数字です。新型のウィルスが出てきたとき、常に同じような事が起こり得るのです。それに対して、古いウィルスは、すでに免疫を持っている人が多いので、感染は広がりにくいことになります。

指数関数と八割叔父さん(4/26)(5/31改訂)

この間マスコミで連日感染状態が発表され、報道が行われています。未曾有の事態ですから、緊張が高まります。そしてオーバーシュート直前の状態が続いていることになっています。

実はひと月ほど前、都知事からそしてそれに続いて専門家から、オーバーシュートという言葉を聞き始めて、何を専門家が言いたいのかを一科学者として理解して発信しようと、このページを書き始めました。

そのころ専門家は誰もオーバーシュートの定義を言っていませんでした。後になって総合すると、どうも二~三日で感染者が倍になるという意味のようだと解りました。日本では”まだ”二~三日で倍になるほどではない、だけど段々速さが速くなってそのうち二~三日で倍になるだろう。だからオーバーシュートを避けなければならない、このような論調が通っています。

何故二~三日なのか? 欧米の例からそうなっています。欧米では感染者数が50人から500人規模になるのに約一週間、500人~5千人規模になるのに約一週間かかっています。感染者数拡大速報のページでそれを説明しています。感染者数が一桁がしばらく続いた後、二桁になったと思ったらすぐに50人を超し、次の週には500人、その次の週には5千人を超えた状態だったのです。二~三日で二倍なら、一週間経てば十倍程度になります。もちろん日本ではそのようなことは起きていません。

感染者数拡大は、高校数学で習う関数(指数関数)

「yがaのx乗に比例する」

で考えます。八割叔父さんもこれを言っているだけです。ある期間経てばa倍になるとすれば、その期間が四倍になればaの四乗倍になるというモデルです。ある期間とは、実効再生算数では感染者が菌を外に出す期間、我々の週増減比では一週間です。

期間を勝手に変えて良いのかという疑問を持つ人も多いでしょう。でも先の複利計算の例でもそれをやっています。年利8%と言うことは、元利合計して一年間の期間ではa=1.08ですが、期間を9年とすればa=2という訳です。ですから指数関数を考えるとき、考えやすい期間をとって考えて良いのです。そして大事なことはa=1を境に、増加か減少かに分かれると言うことです。年利0%はa=1を意味しますが、この場合期間を1年に取ろうが10年に取ろうが、a=1であり、お金(感染者)は増加も減少もしません。感染者が菌を出す期間を基にするより、一週間を基にする方が、一般の人にも解りやすいでしょう。

このaの値が問題ですが、8割叔父さんは欧米の例から、「何もしなければ」a=2.5だと言っています。但しaは実効再生産数です。つまり感染者が菌を出し続ける期間です。8割叔父さんは「人との接触を8割減らすべきだ」と言いますが、それは2.5のx乗の代わりに、2.5×0.2つまり0.5のx乗にすれば、実効再生産数が0.5となり、充分早く減少すると言うわけです。これを我々の言葉で言えば、一週間で仮に0.5倍、つまり半分になれば、4週間では二の4乗分の一、つまり一桁以上少なくなるということです。
結果的に日本ではピークを過ぎた後、そのような展開になりました。(5/31追加)

このページでは一週間で何倍になるかを、週増減比と呼んでいます。一週間で一桁、次の一週間で更に一桁増加した欧米の例では、週増減比が10程度で推移した状態が二週間続いたわけです。

10と5と2.5 (4/26)

このように期間を決めたときのaの値が重要です。期間を一週間としましょう。aとは週増加比とこのHPで呼んでいるものです。このHPでの発見は、ある状態が続けば週増加比はほぼ一定になるということです。そしてそれは実効再生産数というモデルが、有効なモデルであることを意味します。何故なら週増減比は実効再生産数と、同一である指数関数的な変化を、異なった期間を基にして考えているだけだからです。元利合計が一年1.08倍は、九年で2倍と同じ事であるように。

4/26発表の厚労省の最新データを使いながら、考えて行きたいと思います。

すでに一週間前、このHPではこれからは減少が始まる。それがどの程度かが問題だが、減少が始まることに希望を持とうと発信していました。今日のテレビニュースでは、八割叔父さんが減少が始まっているようだが、効果は思ったほど十分ではなかったと言っていました。

それを厚労省が発信する誰でも見れるデータの最新版で見てみましょう。まず日々の感染者増の全国版のフルバージョンを右の第一の図に示します。


一週間毎のピークが三つはっきりと現れ、そのピークが少しずつ減少しているでしょう。このHPで何度も発信してきたドイツやオーストリアのパターンに似ています。希望が持てるパターンです。

一番目の図の赤線で示した4月26日の値を、一週間前4月19日の値で割ったものを4月26日の週増加比と呼んでいます。要は一週間前の値と比較するわけです。一週間前の値のほうが大きければ、これは1より小さくなるでしょう。この値の推移を表したのが、二番目の図です。4月10日頃までは2.5前後で推移していたのが、急速に小さくなり始め、4月16日には1となりました。つまり4月16日と4月9日の値は、ほぼ同じというわけです。ピークはその中間12日か13日でしょう。一番目の図を見ると実際そうなっています。二番目の図で減少が始まっているとみられるのは、すでにピークの頃4月12~13日のデータに現れています。4月7日に緊急事態宣言が出され、その前の週末には都知事などが、外出自粛要請など出していました。その効果が現れ始めたと、この図から判断できます。素早い判断をすることが出来る図なのです。前の週末に効果が出始めたと発信したのはそのためです。

その時は週増加比のカーブが、どこまで落ちてくれるか不明でした。しかしその後の推移が右の二番目の図から解ります。週増加比が0.5程度まで落ちてくれることを願ったのですが、0.8前後を行き来しているようです。(その後週増減比は更に大きく原書しました←5/31追加)

一人が何人に会うかは、地域によって異なる

先ほどの簡単な例で、一人の感染者が10人に会うと仮定した話をしました。でも一人の感染者が何人に会うのかは、さまざまな要因で変わってきます。地域によって感染の拡大のあり方が違っているのはそのためです。

日本での感染の拡大の比較的小ささは、一人が逢う人数の小ささとして考えられます。逢う人の数は、感染の可能性がある仕方で接触する人の数、と言った方がより正確でしょう。握手やハグの習慣、濃厚接触者、同じライブにいた人の数、同じ密閉された場所にいた人、それからライフスタイル、人口密度、さまざまな要因を入れて、ここに書いたシンプルな模型を、専門的に分析しようとすれば、精密化するのがいわゆる専門家です。

でもそのような精密化は、恐らく今まで行われていなかったでしょう。何しろ実経験がないのですから。だから専門家も決定的な意見を言えないのでしょう。グローバル時代が生んだ初めての、そしてマクロン大統領が言うように、大戦以来初めての世界を巻き込む戦争です。いわゆる専門家に頼らず、これから大きな視点で未来を考えるべきときであると、若人達が理解することで、未来は開けるのではないかと思います。今の大人達には、未来を見据える為の専門家は残念ながらいないのですから。若い人達には、役に立たなかったCO2削減論など勉強するのではなく、新しい未来を見据えた専門を作り出してほしいものです。

オーバーシュートが起こりやすい地域とは

首都圏の人は他の地域より長い我慢が強いられることを覚悟しなければなりません。何故ならオーバーシュートが起こりやすい地域は、他ならぬ首都圏なのですから。理由は簡単です。貴方が感染者の間(正確にはウィルスを他人にうつす状態でいる間)、逢う人の数は首都圏で一番多いからです。

先ほどは何も手を打たなくても60~70%感染者が出れば、自然に減少に転じるメカニズムを論じました。でも意識的に感染を抑える方法も、先の考察を基に考えることが出来ます。

先ほどは感染期間中に10人の人に会うと考えての計算でした。これを5人の人に減らせば、一人が一人にうつすということになり、指数関数的増加は起こらないことになります。5人が4人となれば、逆に初めから減少の条件となり、5人が6人になれば、指数関数的に増加するが、速度が遅くなるという、結果になるでしょう。

逆に10人が15人になれば、一人で三人の人に感染が広がることになり、二の累乗の代わりに三の累乗で感染者が増加します。ちょっとその違いを見てみましょう。二の累乗の後ろの()の中に、対応する三の累乗の値を書きます。

1(1),2(3),4(9),8(27),16(81),32(243),64(729),128(2187)

逢う人の数が1.5倍になっただけで、このように劇的な変化が起きるのです。
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